任務の帰りに、ある大きな病院の前を通った。 其の日、例の病室は窓を全開にしていた。 そして目が合った。 「今日和」 にっこり笑って彼女は片手をひらひらと左右に振って見せた。 軽く頭を下げて、そっちに向かった。 何故だか、おいでおいで、という手に見えたんだ。(そんな訳が無いのに) 「助けてくれるの?」 「...は...?」 「あたし。此処から出たことが無いの」 さっき一目見たときの印象とまるで違った。 今はいたずらが過ぎる少女の様。 心臓が悪くて、此処にずっと居るわ、と悲し気に言った。 でもすぐに切り替えて 「嘘よ。ばいばい」 また逢えたら良いね。 彼女は又さっきの笑顔に戻って、そう言った。 「・・・・僕、アレンです!」 「あ、あたし...!」 何で名乗ったのか、今でも解からない。 「アレンくん」 「...只今戻りました」 「御免、Uターン。さっきの町にイノセンスがもう一つあるらしい」 「え?!」 「大きい病院あったでしょ」 厭な予感。 「心臓病で入院してる子が居るんだけどね。 心臓が動いていないのに生きているらしい。 もしかしたらイノセンスの奇怪で生き永らえているのかもしれない」 まさか。 さっきの町に戻る。病院に行って医者にカルテを見せてもらった。 心臓病を患っていたのは一人しか居なかった。 恐る恐る病室に向かう。 ドアをゆっくり開けると、風が吹いた。 「いらっしゃい」 予感的中。彼女だった。 嗚呼、 名前なんて聞かなければよかった。 ラプンツェル 牢獄の中で僕を待ってくれていたのに、其れを裏切ることなんか出来るわけがなかったんだ 「僕には出来ません」 (LOST STORY) |