死にたくない


ぽつりと人間の様に

彼女は呟いた



「にんげんのようじゃない。あたしはにんげんよ。」

「・・・また、詠んだのか」


こいつは心を、人の思惑を詠む。
目の前の人間の言葉にしていない
感情が頭に浮かんでくるのだ、と彼女は云った。

「うるさい。しかたないじゃないのよ。」
「まあ、な。」

蟲と人の稀なる混ざり物。

どちらにも属さない生き物。

「仕方ないから、死にたいんだろう?」

感情が流れてくるのだ。
止め処無く。
歯止め無く。

其れがどれだけ辛く、苦しいモノか。

知りたくない、聞きたくない。
耳を塞いでも目を閉じても直接頭の中に響く。

人間の、人間らしさ溢れる 感情。

「もういや。あたまがいたい。しにたい。」
「でも、死にたくない」
「そうよ。どうしたらいいの。」
「わからないな。」
「これ、わがままなの?」


人間の様に、暖かい涙を流して
子供の様に、悲しく泣いて

彼女は其の時「ヒト」だった。


「・・・また、にんげんのよう、って、いったぁ」

「こどもみたいって、いった」

「あたし、あたしは、いつもヒトだよ」



「まだ何も云って無ーぞ」
「でも、ナカで、いった。うああん。」
「・・・」


「・・・ふあ、ああん。あああん。」
「・・・・やっぱ詠んだか。」


目をあけて


(        )



彼女の名前を心の中でそっと(仮に)呼んだら、
又情けない声を出して泣いた。

(嗚呼、又詠まれたら.......。)


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人間って生き物に憧れる人間。