「明日はあの剣士サンとの、ね」 最初に口を開いたのは私だった。 スクアーロは壁にもたれて俯いていた。長い髪を風で さらさら靡かせて。 私は沈黙が、我慢できなかったの。 「恐いの?」 返って来たのは返事じゃなくて一発おみまい。 あんまり痛くないからきっと手加減したんだわ。 「うるせぇ」 「黙れとは、言わないんでしょ」 「じゃあどっか消えろ」 「私は、 ・・・・」 言うの? 言うべき? う"ぉぉぃと、その先を言うよう要求するスクアーロ。 「........やっぱ、いい」 黙ってこっちを睨むけれど言える筈も無かった。 わざわざいわなくったって分かる事だから。 きかなくったって自分の中にもう答えはあるから。 うっかりいってしまいそうになったのは、 あまりにも自分が小さいから溢れそうになったのを 急いで蓋をしたから。 「あのね、私は消えるけど...」 「......?」 「貴方はどうか消えないで」 静かなる嘘と調和 消えた。 死んだ。スクアーロは私の目の前で血を流した。 あの時の私の忠告を無視して。 嘘つき。 「当たり前だろぉ」って言ったのに。 ザンザスは彼を大笑いした。 そういう人だと分かってたからいいの。いいのよ。 例えまわり皆が「あーあ」って顔で笑っていたとしても 私だけは違う。蓋したものが溢れてくる。 不思議と溢れるものでしょう? 人ならば普通よね? この人達が異常なのよね? (きっとそう。向こうのボスが怒ってるから) 涙になって溢れる気持ちはもう届くことはないけど 止める事だって出来ない。 「ってば泣いてる」 「あんな奴の為に泣くんだね」 「勝手な事言わないで、あんな奴って、何!?」 口々に、何を言うの。 「し、んだ なんて 嘘」 口にした途端実感がわいて益々止まらなくなった。 「しんだ」って言った途端「嗚呼、本当なんだ」って 思えてきたの。 彼に限ってそんな筈はという希望なんかもう無いの? 「見ろよ分かるだろ」 ザンザスがこっちに来た。 私の前に立って髪を乱暴に掴んで、水面に顔を近づけ させられて「ほらこれで良く見えるだろ」と。 「死んだよ」 簡潔にそう言ったザンザスの言葉で私の目の前は真っ暗 になって、スクアーロの血であろうもので染まった海を 出来るものなら洗い流したかった私のハナムケになる 涙さえも消えた。 --- to 02 |