私はただ、一緒が良かっただけ。   静かなる嘘と調和 此処から、逃げられるなんて思ってない。 ザンザスから離れることなんてきっと出来ない。 私をきっとはなさないわ、あの調子だと。 ( 何故かは、わからないけど ) でも、もう希望は持てない。 私はもう終わった様なもの。もしスクアーロが生きて いたとしても、もう会うことはないだろう。 私ももう忘れないといけない。 死んだ人を覚えておくなんて、きっと出来ない。 何かしら絶対忘れていくのよ。 嗚呼、声はどんなだったかしら とか、 顔は もっと格好よかったっけ? とか。 人間は忘れる生き物だと、誰かが言った。 「.....スクアーロ」 白い広い私以外誰も居ないこの静かな部屋に 彼を呼んだ私の声は溶けていった。 きっとこれが最後になる。 彼を呼ぶのが最後になる。 彼をきっと、忘れてみせる。 ノックが鳴った。 (名前呼んでるの聞かれた?)吃驚したけど 「どうぞ」と返事した。 誰だろう、ザンザス? ・・・は、きっとノックなんかしないだろうけど。 「誰?」 なかなか入ってこないので問いかけたけど、 返事も無かった。 「・・・ スクアーロ?」  希望は捨てるんじゃなかったの?  「まさか」 けたけた笑いながら、 「そういう反応が欲しかったんだ」と言い入ってきた。 知ってる。彼。 私は、あの時気絶する前に彼の残酷な笑顔を見た。 何であんな顔が出来るんだろう、といつも思ってい たけれどあの時は私、スクアーロが死んだせいで (ああまたなみだが)可笑しくなってたからそれは なおさらのことだった。 実の兄を殺しただとか色々聞いていたけれど、 それでもわからない。 人は人が死んだのを見て、 あんなに無邪気に笑えるものなのか? そうよ、私はこの人がとても恐かったの。 「・・・ベル、フェゴール・・」 名前を呼ぶと、彼はまたあの笑みを浮かべた。 --- to 03